学生諸君へ

ぶんぶんの受講生諸君へ

 本当なら桜の便りがあちこちから届き、進級・進学と心躍るはずの季節なのに、今年の春はとても悲しい気持ちで迎えることが残念です。
みんなも承知のとおり、3月11日午後2時46分に三陸と茨城沖の2ヶ所でM9の大地震が起きました。私の住んでいる栃木県も震度6強と強い揺れに見舞われました。その後の停電等で教材や添削の作業が遅れてしまったことを、まずはお詫び申し上げます。
今回の地震と津波の被害は知ってのとおりとても酷いものです。幸いにも東北地方にぶんぶんの生徒はいませんが、東北暮らしの経験がある私はあの惨状を見るにつけ、胸がちぎれそうになります。そしてその後の原発騒動。放射能はこの栃木県でも観測され、栃木産のホウレン草などは出荷停止となりました。栃木県は福島県のお隣ということもあって、原発の避難民の皆さんの避難所を設け受け入れています。市内でも福島ナンバーの車を多く見かけるようになりました。計画停電で閉めている店も多く、とても夜が来るのが早くなりました。

 「普通でない状況」です。しばらくこの状態は続くでしょう。それでも私たち庶民は日々の生活を送り、頭のどこかで「恐怖」を感じつつも、それを振り払いいつもどおり仕事をしています。
 今回の原発事故で、いろんなことを考えさせられました。ちょっと遅かったけどね。いや、まだ遅くはないな。まだまだ変えることはできるな。だから聞いてください。
今、放射能漏れを起こしている福島第一原発は、東京電力の持ち物です。東北地方にあるけれど、そこで発電した電気は関東地方へ送電線を通って送られていました。電気をたくさん使う関東地方の電力を作る原発が、電気をあまり使わない東北地方に設置されているのです。そして事故が起きると、福島第一原発で発電した電力をぜんぜん使っていない福島県の人たちが、家を追われているのです。都市部の生活のために地方が危険を請け負い、身代わりになるというまったくおかしな構造です。
 この事故が起きるまで、福島の人にそんな負担を強いているなど考えもせず、関東の住民である私自身も電気を当たり前のように使っていました。私たちが知らない(知ろうとしない)だけで、こういう不公平でゆがんだ構造が世の中にはきっとたくさんあるのだと思います。

 こんな状況になった今だから、もう一度目をしっかり見開いて物事の真実を見ていく必要があると思う。ぶんぶんの生徒なら、それをやってほしい。私はみんなに文章の書き方を教えているつもりはありません。物事の見方や考え方を教えているつもりです。そして公平さと秩序を、これから大人になるみんなの手でこの国に実現してほしいのです。そしたらこんな事故はなくなると思う。
 昼間は停電で仕事が遅れるので、最近は徹夜することも多くなりました。明け方5時をすぎると、外が明るくなってきます。5時半もすぎれば、東の空に燃えるようなきれいな朝焼けが現れます。「ああ、今日も無事に長い夜が明けた」とほっとする自分がいます。
この国は、これから大きく変わるかもしれません。でもこわがらないで、勇気を持って進んでいきましょう。私もみんながいる限り、言葉を出し続けます。
 どれからどうかみんなも祈ってください。まだ雪の中で凍える東北の人たちに、早く春の陽射しが注ぎますようにと。そして原発の被害がもうこれ以上広がらないことを。

2011年3月28日   恩田澄江